子供の頃、ワタリに野原に連れて行ってもらったことがあった。
だからといって、何をするわけでもない。
ただプラッと、軽く歩いて、散歩をしただけだった。
その途中に、私は“それ”を見つけた。
6.もう、ひとりなんかじゃないよ。
「ワタリ、これは何だ?」
「クローバーですよ。」
「くろーばー?」
丸い葉っぱが、3枚ずつ細っこい茎にくっ付いている植物。
所々に、白く細長い花弁を持つ花を咲かせてはいたが、
郡になって生えているため、葉の方が花よりも目立っていた。
「面白い…」
「そうでございますか?」
にこやかに微笑むワタリに背を向け、私はしゃがみこんでクローバーに手を伸ばした。
私の周りの植物といえば、せいぜい部屋に飾られる切花か、部屋から見える樹木ぐらい。
それも、大して興味はなかったものだ。
しかし、この“くろーばー”という植物は違った。
一見すると、魚の目のような奇怪な模様。
背が低いかと思いきや、よく見れば茎の部分はかなりの長さがある。
大きさの差はあれど、葉はすべて同じ様相をしていた。
それは、部屋の中に閉じこもり、本ばかり読んでいた私にとって、
初めて見る、とてもヘンテコな植物であった。
「よく、目を凝らして見てみてください。」
「え?」
「三枚葉に紛れて、ときどき四枚葉のクローバーがあるんですよ。」
「四枚?」
「ええ。――そして、その四つ葉のクローバーを見つけた者は幸せになれると、
昔から云われているんです。」
「そうなのか?」
「はい。」
「ワタリは見たことがあるのか?」
「ええ、ありますよ。」
「そうか。」
ワタリの答えを聞き、四つ葉のクローバーがそれほど希少価値の高いモノではないと解かった。
おそらく、動物のような突然変異などでできるものではなく、
4枚葉という遺伝子情報を持つクローバーが、ただ少ないだけなのだろう。
ちょっとした変わりモノ。
珍しいというだけで、周りから『幸せ』などというものを期待される。
本当は、みんなと同じなのに。
少し違うというだけで、特別視される、可哀想な存在。
それが、四つ葉のクローバーの正体だ。
「――私と同じか…」
「何でございますか?」
「…なんでもない。」
小さく呟いた言葉は、温かい春風にさらわれ、ワタリには聞こえなかったようだ。
「あ…」
「どうしました?」
「あった。」
四つ葉のクローバー。
「それは素晴らしい。――きっと、貴方も幸せになれますよ。」
「……だといいな。」
「…………」
四つ葉のクローバーを、指先でそっと撫でる。
可哀想にと、孤独を慰め合うように。
しかし四つ葉のクローバーは、私の気持ちなど知りもせず、
他の三つ葉のクローバーと共に、気持ち良さそうに、風に揺れていた。
「そろそろ帰ろう、ワタリ。」
「摘まないのですか?」
「何をだ?」
「四つ葉のクローバーですよ。」
「………いいさ。興味がない。」
「さようでございますか。」
「ああ。――それより、お腹が空いた。」
「それでは、戻りましたらば、3時のお茶にしましょう。」
「それがいい。」
クローバーに背を向け、来た道をワタリを従わせて歩いて行く。
帰り道、私は一度も振り返ることはなかった。
「―――見つけた…」
数年後、私は日本でキラ事件をきっかけに、とある少年を見つける。
少年の名は、夜神月。
一目見て、すぐに解かった。
彼もまた、私と同じ存在――四つ葉のクローバーである…と。
四つ葉のクローバーを見つけた者は、幸せになれるらしい。
果たして私は、幸せに、なれるのだろうか――?
「夜神月…
見つけた、私の、四つ葉のクローバー……」
画面に映る、夜神月の画像をそっと手を伸ばし、指先で撫でる。
いつかの、四つ葉のクローバーと同じように。
もうひとりの、可哀想な存在を慈しむように。
絶対に、手にいれてみせる。
幸せになれるかどうかは、手にいれてみてからのお楽しみだ。
「待っていろ、夜神月。
――必ず…、かならず…!」
「必ずあ~んなことや、こぉ~んなことしてやるんだからな~v」とかだったら、ぶち壊しね。
解かってるなら書くなって、ね。(お莫迦)
四つ葉ってだけで摘まれちゃうのは、可哀想だなって思って。
...20050624
×おしまい