ある時、夜神くんは云った。

「夢を見たんだ。」
「夢?…ですか。」
「そう。君と僕が出てくる夢。」
7.いつか見た夢の在り処を探しに行こう
「一体どんな内容の夢だったんですか?」
「解からない。」
「解からない?」
「そう。――ただ、僕がいて、君がいたんだ。」

一体、夜神くんはどういう心境で夢の話をすることにしたのか。
それは解からないが、とにかく私は、その話を聞くことにした。

「それで、私たちは何処にいたんですか?」
「…解からない。何も無い所だった。」
「それでは、私たちは何をしていたんですか?」
「何だろうね?何もしてなかったよ。」
「何も無い所で、何もしていなかったんですか。」

何も無い所なら、何もできないだろう。
しかし、私が思ったのはそんなことではなく。
彼は何故、そんな無色透明な夢を見たことを、私に知らせたいのかということ。

――貴方は私に、何を知らせたいのですか?

「……ああ、いや。違うな。」
「え?」
「何もしてなくはなかったよ。」
「…というと?」

「君と、手を繋いでいたんだ。」

「手、ですか…?」
「そう。夢の中で僕たちは、何も無い所で、ただ手を繋いでいたんだ。」

それはまた、不思議な夢だ。
現在、鎖で繋がれている私たちだが、そういえば、手を繋いだ事はない。

「それで?」
「ん?」
「それで、そんな夢を見た夜神くんは、一体どう思ったんですか?」
「僕かい?そうだね、僕は……」

夢の内容を思い出しているのだろう。
夜神くんはそっと目を閉じると、―――ゆっくりと、笑った。

「僕はね、――…」

“僕は”?
貴方は一体、何を想った?

笑みを形作ったままの唇から、言葉が紡ぎ出されたというその時、
しかし無常にも私は、目を覚ましてしまったのだった。

「…夢?」

腕には、私たちを繋ぐ鎖。
隣には、夢の中で『夢を見た』と云っていた夜神くんが眠っている。

そう、すべては私の見た夢だったのだ。


――嗚呼、貴方は一体、何と云ってくれたんですか?


聞きたかった、言葉の続き。
知りたかった、貴方の想い。

「教えてください、夜神くん。
 貴方は私と手を繋いで、一体どんなことを想ったんですか?」

眠る貴方は、応えてはくれない。
再び同じ夢も見られないだろう。

それでも、聞きたい。
それでも、知りたいのだ。
だから私は、目覚めた貴方と、今度は本当に手を繋いでみて、直接答えを聞こうと思う。

――だから、早く目覚めてくださいね。

そんな気持ちいっぱいに、私は眠る貴方と唇を重ねた。
まぁ、まず間違いなく殴られるだろうけどね。
ブラボー殴り愛v

...20050630
×おしまい