ヒマワリの中を駆け抜けていった貴方を、私はあっという間に見失ってしまった。
大きな声で名前を呼んでも、返事は返ってこない。

見えなくなる前に残していった、彼の言葉を思い出す。
『捕まえてみろよ』
挑発的な笑みと共に残されたその言葉は、私の胸の内を、彷彿とさせた。
8.「知ってた?この世の中に”絶対”は無いんだよ」
むやみやたらに走ったせいで、息が切れた。
汗も滝のように流れている。

彼から預かった、腕の時計で確かめてみると、彼を探し始めてから既に30分が経っていた。
未だに、影すら捕らえられない。
いくら私が世界の名探偵であっても、
この広大なヒマワリ畑で、ヒト一人を探すのは、容易なことではなかった。

立ち止まり、太陽を見上げる。
遥か上空のあの位置ならば、たやすく彼を見つけ出せるだろうにと思ったのだ。
しかし、例え見えていたとしても、太陽は彼の居場所を示してはくれない。
焼けるような眩しい光が、私の目を貫いただけに終わった。


強い風が一陣、吹き抜けて、黄色い海を波立たせる。
ヒマワリ同士が触れ合って、がさがさと騒々しい音を立てた。
四方から聞こえるそのざわめきは、まるで、この空間には私しかいないのではないかと思わせる。

――彼を見つけることは、一生できないのではと思わせる。

「……あ、ぁ…」

堪らない孤独感が押し寄せる。

必死で彼の名前を叫んだ。
叫び過ぎて声が嗄れる。
それでも私は、叫び続けた。

そして…
再び強い風が吹き抜けた時、私の体は何かに強く抱きしめられていた。

「竜崎?!」
「あ…」
「何だ、どうした!?」
「ら、ライトくっ…ん…」
「え?何で泣いているんだよ、お前?」
「さ、淋しかったんですっ…」
「……莫迦…」

彼の胸にしがみ付いて、縋り泣く。
温かい手が、私の頭を撫でてくれた。

「僕が何処にいても解かるって云っていたのは、何処の誰だよ?」
「…それとこれとは話が違います。」
「何が違うんだか。」

やれやれと云いながら、彼はため息を吐いた。

「暑いよ、竜崎。離れてくれない?」
「イヤです。」
「ふざけてないで、ほら。本当に暑いから。」
「絶対にイヤです。」

再び彼から、呆れたようなため息が吐かれる。
それでも私は、腕の力を緩めなかった。

だってせっかく捕まえたのに、離せるわけが無い。
絶対に離すものか。

「だったら、始めから僕を離すなよ…」

目線を逸らし、ぼそりと囁かれた言葉を、私は騒々しい黄色い海の中でも、聞き逃すことはなかった。
えー?L月のつもりなんだよ、これ。ホントに本気でさ。

ウチの竜崎ってば、泣き虫くんが多いな…
今度、鬼畜竜崎とか書いてみたいなぁ。

...20050829
×おしまい