月とL、お互いを鎖で繋いでから数日が経った。
常に他人と繋がれているという生活に、初めはさすがの月も慣れない様子だった。
しかし、ここ最近ではすっかり慣れたようで、鎖に絡まるなどというミスもなくなった。
それに、自分を疑っている人間と一緒に過ごすという生活にも慣れたようだ。
警戒した態度をとっていた月が、すっかり気を許すようになったことから窺える。
そして今では、こんなことも…
「おや。ずいぶんと静かだと思ったら…眠ってしまっていたんですね。」
11.行き着くは天国か地獄か
夜も晩くなった捜査本部。
その一室では、昼間のように明るく、煌々と明かりがついていた。
部屋の中には2人のヒトの気配、Lと月である。
夜になり、他の捜査本部の者達が帰ってしまった後、
この大きなビルにLと月は2人きりとなってしまう。
それは、Lの生活スペースがこのビルであり、
鎖で繋がれている月も、必然的に残ることになるからだ。
Lは捜査の時、自分の睡眠時間を削ってまで仕事に没頭する。
しかし、月がキラではなかったとなった今、Lのやることといえば以前の資料を見直す程度。
すっかりダレていた。
だから普通に、夜になったら寝るという生活を…しているはずなのだが。
それがこの時間、まだLはベッドの上ではなく、
パソコンを前にしてイスの上にいつもの座り方でいる。
それは、鎖で繋がれている者に合わせてのことだった。
すなわち、こんな夜晩くまで働いているのは、むしろ月の方なのである。
月は、元から父親譲りで正義感が強く、真面目な性格だ。
1日も早く、キラを捕まえたいと思うのは当然。
しかも、自分が疑われて監禁までされたのだ、
なおさら早く捕まえたいと思うのは、必然と云えた。
今日は、いつも元気なミサがロケで居ない。
夜更かしまでして捜査をしようとする月を、いつもはミサが「身体に悪いから」と止める。
そのストッパーがいない今日、月は思う存分夜更かし捜査をしているのだった。
しかしそれも、AM3:00を過ぎた頃には限界であったようだ。
夜食のケーキを完食し、月の気の済むまでやらせてやろうと、
コーヒーを啜っていたLが気が付くと、
隣では、イスに座って頬杖を付きながら、眠ってしまっている月がいたのだった。
「眠っていると、まるで子どもですね。
いつもこれくらい大人しければいいのに……」
口を開けば罵詈雑言。
ちょっと動けば、殴りかかってくる。
とはいえ、それというのも、Lが自分の欲望のままに、月にちょっかいを出すからなのだが…
月にとっては、いわゆる、正当防衛というやつである。
「本当に可愛い寝顔です。こんなに無防備に眠っていると……」
ゴクリ。
月の寝顔に見入っている、Lの喉が鳴った。
「ちょ、ちょっとくらい…。今なら……」
できるだけ音を立てないように、イスからそっと立ち上がるL。
そして慎重に月に近づいていく。
鎖で繋がれているため、それほど離れてはいない。
すぐに月の元へと辿り着く。
そして、息の掛かるくらい顔を近づけ、目指すは浅い呼吸を繰り返す、月の可愛い唇。
「竜崎……」
「!」
唇が触れ合おうとしたその直前、月がLを呼んだ。
当然驚いて、Lはすぐに飛び退いた。
「す、すみません月くん!その、私はまだ何も…!」
殴られる!と思い、言い訳をしつつ、思わず身構えるL。
「…………」
しかし、月が殴りかかってくる様子はない。
「? ら、月くん?」
恐る恐る呼びかける。
しかし、返事はない。
その代わりに聞こえてきたのは、「スー…」という規則正しい寝息であった。
「ね、寝言だったんですか…?」
起きていないのだから、先程のは寝言だったのだろう。
Lの声に不快げに一瞬眉を顰めはしたものの、
月は同じ姿勢のまま、眠り続けているのであった。
「まったく、驚かさないでくださいよ。寝言とはいえ呼ばれたら、思わず起きたと…
ん?待ってください。寝言で、私を呼んだ…?寝言で、私を……」
ゆっくりと、その事実が意味することを考えるL。
そして、とある考えに行き着いた。
(
つ、つまり、月くんは私の夢を…!?)
なんということだろうか。
あまりの感動に、いつもは猫背のLの背筋が、ピシッとまっすぐになった。
(そうですか、そうですか。月くんも、本当は私のことを!
普段のあの態度は、やっぱり、素直になり切れないテレ隠しだったんですね…!)
気持ちのない相手に、無理やり手を出すのはずっと気が引けていたが、
月の気持ちを確認した今、Lに怖いモノはない。
(これからは、もっと積極的に攻めさせてもらいますよv)
今までは、「奇麗な髪ですね」と云いながら、
月の頭に顔をうずめ、芳しい月の匂いを嗅ぐ程度で我慢していたが。
今までは、「素敵なお尻ですね」と云いながら、
月の尻を、隙をみては撫でまわす程度で我慢していたが。
これからは、思う存分、自分の望むままにできる!
「月くん…!これからはお互い、深く深ーく愛し合いましょうね!!
手始めに、可愛い寝顔にキスを……」
鼻息荒く、再び月に顔を近づけていくL。
そして、2人の唇が触れ合う…
…という直前、今度こそ月が、
本当に目覚めた。
「ん、竜崎…?」
「え?」
「何やって……え?竜崎…?」
目覚めてすぐ目の前に迫っている、クマの目立つ見知った顔。
さすがの月も、突然の出来事に、頭がついていかない。
が、そこはやっぱり月、
2秒で状況を把握した。
一方Lも、寝起きの呆然とした月の顔に見惚れつつも、なんとなくヤバイ気配を感じ取った。
しかし、これはもう誤魔化しようがない。
だが、すぐにLは思い直す。
月の気持ちが解かった今、誤魔化す必要などないではないか。
ただ少し驚いている月を、落ち着かせるだけでいい。
そう思い至ったLは、
にこやかに月に微笑みかけた。
「おはようございます、月くん。」
だが、例の無表情の満面の笑みを向けられても、落ち着けるわけがない。
いや、それよりも、この状況自体、落ち着いていられるものではない。
「竜崎…。何やってるんだ?
いや、何をやろうとした?いやいや、
僕に何をした?!」
「可愛い寝顔をさらして眠っているので、ちょっとキスしようとしただけですよ。」
「なっ…!」
「恥ずかしがらなくていいですよ。
月くんの気持ちは、もう解かっていますから。
では、気を取り直して、寝覚めのキスをしましょうねv」
「
誰がするかぁー!!離れろ、この変態がー!!」
直後Lは、月に奇麗なアッパーを食らって宙を舞った。
それでもLは、
「またまた…。本当は私のことを愛してるくせに。
テレ隠しに殴ったって、これからはもう、私、騙されませんよv」
という風に、嬉しそうに気絶をしたという。
無意識にとはいえ、ふと漏らした寝言から始まった、Lの思い込み。
キラが捕まらない限り続くであろう、2人の鎖生活。
これから月の貞操は、どうなってしまうのだろうか。
月は、竜崎のセクハラのせいで、悪夢を見ていただけです。
...20050416
×おしまい