心臓は右にあるので左に君のを詰めようか
「僕の武器は、若さとこの美貌だ。」

「………自分で云ってて、恥ずかしくないんですか?」
「ははっ。間違ったことを云ってるわけじゃないんだ、恥ずかしくないよ?」
「そうですか…」

完全に酔っ払っている彼を、私がため息を噛み殺しながら相手をして、彼是2時間が経った。
一体、この莫迦げた宴は、いつになれば終わるのだろうか?


何故か私たちは、2人でお酒を飲んでいる。
日本では未成年の飲酒は法律で禁止されているハズなのに。
初めに飲もうと云い出したのは、月くんの方だった。

「何?竜崎は飲めないの?」
「飲めないわけではないのですが…」

火口が死に、死神がいるこの状況で、月くんは一体何を考えているのだろうか。

ちょっと出てくる、と一言残してしばらくした後、
ビル外から戻ってきた彼が手にしていたのは、大量のお酒が入ったビニル袋であった。
彼は、それらを買いに出て行ったようだった。

「よく…買えましたね。」
「ああ。さすがに怪しまれて一応質問を受けたけど、適当に答えたら売ってくれたよ。」

売った店員を責める事はできない。
相手が夜神月では、並大抵の人間では敵わないであろう。

「手錠が外れて、初めて外出して買ったものがお酒って、どうなんですか?」
「別にいいだろう?」
「これ、おひとりで飲むんですか?」
「まさか。君と僕で飲むのさ。」
「私…?」

何故?とそのままの疑問を口にすると、

「僕たち、友達だろ?」

と云って、爽やかな笑顔を見せ付けられてしまい、結局私も飲むことになってしまった。

「死神。お前も飲むか?」
『要らない。』
「なんだ、つれないな。」
「死神に“つれない”もなにもないでしょう。」
「それもそうか。」

2時間飲み続けた彼は、すっかりできあがってしまい、死神にまで絡む始末。
見た目にはそれほど酔っているようには見えないが、発言がこれでは…
そろそろ夜神さんを呼んで、彼を止めた方がいいのかもしれない。

私がそう思い始めた時だった。
さっきまで、他愛もない話をしていた彼が、ふいに黙り込んだ。
どうしたのかと様子を窺っていると、彼はゆっくりと立ち上がると、私の隣へと移動した。

「…月くん?」
「竜崎は、お酒強いんだね。」
「はあ…」
「残念だな…。せっかく、酔い潰れた君が見られると思ったのに。」
「酔い潰したかったんですか?」
「ん…、それも面白いかなと思ってたけど。
 別に、それが目的で飲もうと思ったわけじゃないよ。」
「では、何の目的で?」

先ほどからずっと抱えていた疑問を、ようやく訊けた。
ところが彼は私の質問に対し、相変わらずの笑顔を見せると、イキナリ私の首筋に噛み付いてきた。

「……痛いですよ、月くん。」

本気で噛み付いているわけではないので、突き放すことはしない。
…いや、痛くないからといって、ここで突き放したとしてもおかしくはないか。
思考が鈍い。
どうやら、知らずうちに私も相当酔っているようだ。

「月くん。そういうことをすると、襲われてしまいますよ?」
「――襲えば?」

ようやく口を離した彼から飛び出した科白を、私はすぐには理解することができなかった。
やはり、酔いのせいでかなり思考が鈍くなっている。

「嘘だよ。」
「…………」

そう、私は酔っているのだ。
自分にそう云い聞かせて、私は月くんを押し倒した。

「…嘘だって、云ったのに。」
「聞こえませんでした。」
「嘘つき。」
「嘘じゃありません。」
「そうじゃなくて、――僕たち、“友達”なんだろう?」
「…昔の話でしょう?」

それに、今更ですよ。
彼のシャツをたくし上げ、白い腹を舐め上げる。

「ぁ…、待て、死神が…」
「もういませんよ。酔っ払いが絡むので、とっくにどこかへ行ってしまいました。」
「そうか…」

本当は、死神から目を離してはいけないのかもしれないが、それこそ今更だ。
私とて、何日も起きていられるわけではない。
我々が眠っている間、死神がどうしているかなど、監視カメラを止めてしまった今となっては解からない。
どのみち、見張り続けることなどできるわけがないのだ。

「今日は、どうして私と飲む気になったのですか?」
「…なんとなく、だよ……んっ…」
「嘘ですね。」
「さあ、ど…かな…?」

彼の意図は結局解からないままだったが、私は手を止めることなく、いつものように彼を抱いた。

竜崎。
君には解からないだろうけどね、もう時間がないんだよ。
もうすぐ君は死ぬ。
僕の計画は動きだしてしまった。

明日、ミサによって犯罪者裁きが再開され、キラが再び始動したことを知るだろう。
そうなれば、君はまたミサと僕を疑う。(いや、今も疑っているだろうけれど)
ミサに肩入れしているレムが、そのことに危機感を抱き、僕の計画に気付くことになる。
そうなれば、君は終わりだ。

だからこれは、最期の宴。
君のために用意した、僕からの贈り物。

君が欲しくて堪らなかった『キラ』は与えられないけれど。
君が愛してやまない『夜神 月』を、最期に思う存分味わわせてあげるよ。

さようなら、竜崎。
もうすぐだよ。
早く僕のものになって、眠っておくれ。
ひっさびさの更新は、やっぱりL月に限る。
昔途中まで書いていたものを、リハビリも兼ねて完成させてみました。
たぶん、途中までギャグにしようとしていた形跡が(若さと美貌あたり/笑)ありますが、
ちょいシリアス風味で。

やっぱりL月は好きだな…。

...20160330
×おしまい