ライトがリュークに殺されず、ニアに捕まったら…、というIF話です。
あんまりラブ要素が見えないのですが、よろしければ…
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データ流出を餌に、革命軍と裏で繋がっていた者の正体とその証拠を挙げることに成功した。
これで某国大統領の依頼は完了である。
「ロジャー。明日、大統領に依頼が終了したことを報告してください。」
『今日連絡しないのか?』
「報告書をまとめる必要があります。明日までに作らせますので、セッティングをお願いします。」
『……また”彼”に任せるのか?』
「何か問題でも?」
『いや……』
否定の形をとりながらも、不満そうな声音が端末越しでも伝わってくる。
ロジャーは未だに、”彼”をLの仕事に使うことに抵抗があるようだ。
気持ちは解からなくもない。
――だって彼は『キラ』だから。
夜神 月。
デスノートを使い、Lを殺した男。
Lに勝った、唯一の相手。
夜神月は、私の監視下の元、今もまだ生きている。
マリアの左手の薬指は無く神はほくそ笑む
メロによる無謀な行動のおかげで、YB倉庫での死闘に勝った私は、
世情がキラ派に流れてしまった状況で、キラを死刑台に送ることはできないと判断した。
キラの成した偉業(本来は悪行というべきだが)は、計り知れない。
戦争がなくなり、犯罪は激減した。
だが今、夜神月にそれらの記憶はない。私がノートを燃やしたからだ。
あの場にいた黒い死神(リュークといったか)の言葉を信じ、ノートを燃やした瞬間、
キラであった夜神月と魅上照はノートに関する記憶をすべて失っていた。
同時に、黒い死神の姿も見えなくなった。
その2点が、日本捜査本部所有のノートとジェバンニが押収したノートはいずれも本物であるという何よりの証明になった。
魅上照はあれから10日後、発狂して死んだらしい。
「らしい」というのは、魅上照の身柄は日本捜査本部に任せていたため、ロジャー(現ワタリ役)に連絡が入ったことで知ったからだ。
あの時、夜神月の身柄も引き渡せと日本捜査本部の一部(マツダとかいったか)が煩かったのだが、それは断固として拒否した。
夜神月はあのLに勝った男。
真のキラ。
記憶があろうとなかろうと、誰の手にも渡すわけにいかない。
そうして私は、あの場で宣言した通り、責任を持って私以外誰の目も声も届かない、とある場所に夜神月を幽閉している。
事件資料をとりあえず突っ込んであるメモリーチップを手に、私は夜神月を幽閉している地下シェルターへと向かった。
静脈キー網膜キーetc.etc.あらゆる認証ゲートをくぐらないと、私以外に此処に来ることはできない。
当然、出ることも適わないだろう。
つまり、もしも私の身に何かあった場合、夜神月はこのままこの部屋で死ぬ運命にあるということだ。
この部屋を訪れる度に、私は軽い高揚感に包まれた。
『夜神月。起きていますか?』
最後の認証ゲート前にある、内線通信用マイクから室内にいるはずの男に声を掛ける。
しばらくして、ブォンという室内マイクがオンになったことを知らせる電子音の後、返答があった。
『今何時だと思っている。帰れ。』
『相変わらず大層な物言いですね。時計がない部屋で、何時も何もないでしょう。』
『…………』
『仕事を持ってきました。入りますよ。』
『初めからそのつもりのくせに。毎度わざわざ訊いてくるな。』
当然だ。お前はキラ。拒否する権利などない。
解かっていながら来るたびに問答をするのは、彼をわざと不愉快にさせるためだ。
これくらいの楽しみがあってもバチは当たるまい。
3重扉になっているセキュリティーゲートをくぐると、憮然とした顔で夜神月は腕組みをして私を待っていた。
毎回そうだ。
これがあるからこそ、入室前の問答を止められないのかもしれない。
「ただいま、夜神月。」
「……おかえり、とでも云えば満足か?」
幽閉した当初より、痩せた身体。目は落ちくぼみ、顔色も悪い。
それでも、眼光の力強さだけはあの時のままだ。
この部屋は完全な密室である。
外界の様子を知ることは一切できない。
太陽が拝めないのはもちろん、時計もないため、日が経つ感覚は完全に失われるだろう。
並みの防音設備ではないため、室内は耳鳴りがするほど無音だ。
室温は一定。
この部屋では、どこからも何の変化も望めない。
人間は、一定期間以上外界から遮断された空間に閉じ込められると、気狂いを起こす。
それなのに、夜神月は生きていた。
キラの記憶がなくなったとはいえ、恐ろしい精神力の強さである。
この部屋で得られるものは、最低限の水と栄養補助食品、ビタミン剤。
そして、大量の書物だけだ。
この書物は、ただの書物ではない。
これらはすべて、初代L――夜神月が竜崎と呼ぶ、あの男が解決したあらゆるの事件の記録ファイルだった。
今時電子ファイル化していないことをおかしく思う者もあるかもしれないが、事件ファイルはすべて紙媒体で此処に保管してあった。
Lは紙媒体で書類を残すことに拘っていたようだ。(もちろんすべてラミネート加工され、劣化しないようにしてある)
物理資料に敵うものはないという考えからだろう。
元々この部屋は、初代Lが資料室として使っていた一室だった。
私がLを引き継いだとき、手に入れたものの一つである。
時折、この部屋に籠って何かをしていたのか、最低限の生活スペースがあり、当然ながらセキュリティも万全だった。
夜神月を幽閉すると決めた時、真っ先にこの場所が浮かんだ。
これほど都合が良い場所はないだろう。
Lの成した偉業を(これこそを偉業と呼ぶのだ)思い知らせることもできる、一石二鳥の場所である。
そう、思っていたのだが――…
この部屋に夜神月を閉じ込めてしばらくして、私は後悔していた。
こんなところに、連れてくるのではなかった。
此処を訪れ、夜神月と相対するたびに、私は悪態を吐きたくなる衝動にかられている。
まあ、そんな態度を億尾にも出したことはないが。
「今日解決した事件の資料がコレに入っています。
明日、依頼人に報告するので、まとめておいてください。」
ポケットに入れて持ち込んだメモリーチップを、不機嫌な夜神月の眼前に突き出す。
眉間にしわを寄せ、「明日だと?」と不満げな声が上がった。
「何か問題でも?」
言外に「他にやることもない、ただ生きているだけのお前に文句があるのか」という意味合いを込めて、見つめ返す。
私の嫌味な視線を、頭の良いこの男なら正確に読み取ったことだろう。
プライドの高い夜神月にとって、これ以上の侮辱はあるまい。
ちなみに「明日」というのは「私が帰る時まで」を意味する。
この部屋に私と2人きりになる状況を、夜神月は嫌っている。
私を追い出したければ、早くこの仕事を終わらせるほかない。
「……端末を起動しろ。」
「いつも物分かりが良くて、手間が省けて助かります。」
この部屋には、少々古い型のPCが1台ある。
古いとはいえセキュリティは固く、起動するにはUSB型認証スティックが必要で、
私がそれを持ち込まない限り、夜神月がPCを起動することは適わない。(起動しないPCなど、ただの鉄の塊である)
端末に認証スティックを挿すと、自動的にスイッチが入る仕組みだ。
部屋の景色を映していた黒いディスプレイに光が灯り、立ち上がったコンソール画面に緑色の命令文が次々と流れ始めた。
起動が完了するのを待つことなく、私はこの部屋に唯一ある、座り心地の良さそうな、
見るからに質の良いカウチソファに足を向けた。
カウチソファの上には、読みかけと思しきLの過去の事件ファイルの1つが置いてあった。
これは、ロサンゼルスBB連続殺人事件のものだろう。
ことのほか夜神月はこの事件の資料を気に入っているようで、何度も読み返しているのを私は知っている。
「見るのは勝手ですが、資料はちゃんと元の場所に戻してくださいね。
貴重なものなんですよ?」
二度と手に入らない、Lの遺物。
そしてこれが、私がこの部屋に夜神月を閉じ込めたことを後悔した原因でもあった。
外界から完全にシャットアウトされた、何の面白みもない単調な空間。
常人であれば、1か月と経たずに発狂して死ぬだろうこの部屋で、夜神月を生かし続けるもの。
それが、Lの残した事件ファイルなのである。
夜神月は、初代Lが解決した事件簿から彼の影を追っている。
記憶をなくした彼にとっては、Lは敵ではなく、尊敬する対象らしい。
いや、それ以上の感情があるか……
かつて共に事件を追っていた2人が、普通の関係ではなかったことを私は見抜いていた。
それに気付けたのは、Lを継いだ私が、常に『初代Lだったら…』と物事を考えているからだろう。
――Lは夜神月を愛していた。
間違いないといえるほどの確信を持ったのは、自分の中で芽生えた、初代Lへの尊敬以外の感情のせいだ。
初代Lの影を追う夜神月を見て、私の中で生まれた尊敬以外の感情。
それは”嫉妬”だった。
(お前を捕まえたのは、私なのに……)
キラに負けたくせに、未だに夜神月を捕えて離さない男。
初代L。尊敬し、追いかけていた背中だが、今では忌々しく煩わしい。
私の心の中の葛藤はしかし、起動した端末の前に座り、背を向けている夜神月には届かない。
私の嫌味な言葉に食ってかかることもなく、夜神月は淡々と言葉を返すのみだ。
「云われなくても解かってるよ。これが終わったら、すぐに片付ける。」
私から受け取ったメモリーチップをリーダーに差し込むと、黙々と作業に取り掛かり始めた。
事件の概要を訊き出すことも、資料に関する説明を求めることもない。
そら恐ろしい能力の高さだ。毎度舌を巻く。
これが『キラ』だった男。Lが命がけで追いかけるだけはある。
端末から発する光が、夜神月のやつれた顔を照らす様を、カウチソファに座りながら眺める。
奇麗だと思った。いくら見ても見飽きないほどに。
(Lもこの顔にやられたのだろうか。
キラの記憶もなかったとしたら、殺されても致し方ないだろうに。)
日本捜査本部から聞いた、Lと夜神月が手錠で繋がれていた頃の話。
Lは毎日この顔を傍に置き、聡明な意見を交わして、どれだけ楽しんでいたことだろう。
(それを思うと、負けたのは自業自得ではないだろうか?)
Lは遊びすぎたのだ。あの男は、ただでさえ事件を解決することを暇つぶしと称していた。
今までのどんな事件よりも、夜神月という遊び相手は面白かったのだろうと簡単に推察できる。
(だから殺されるなんてヘマをするのだ。まったく、呆れ果てますね……)
夜神月がキーボードを叩く音を子守唄に、私は尊敬してやまない莫迦な負け犬をあざ笑いながら眠りに就いた。
「――…ア、……きろ。」
「…………」
「ニア。ったく、いつまで寝てるつもりだ。」
「……夜神、月…」
「ファイリングできたぞ。さっさとこれを持って此処から出ていってくれ。」
薄らと目を開けると、カウチソファに座りながら眠っていた私の前には、夜神月が立っていた。
どれほど眠っていたのか、時計がないこの部屋では知る術はない。
それでも、半日は経っていないだろう。
せいぜい3、4時間か。
それだけ私の眠りは浅く、この男の処理能力は、密室で腐らせるには勿体ないほど優秀だ。
「ご苦労様です。相変わらず完璧な仕上がりですね。」
「中身を確認したわけでもないのに。嫌味か?」
夜神月から、上書きされているであろうメモリーチップを受け取り、ポケットに仕舞った。
中を見なくとも、今までと同様完璧な仕上がりになっていることが解かる。
後はこれをロジャーに託せば、今回の依頼は終了である。
「……いつも思うけど、君は何で此処に来て眠れるんだ?」
「貴方に殺されるかもしれないのに?」
「―――」
無言は肯定の意。
デスノートもノートの切れ端も、夜神月は持っていない。
更に云えば、キラだった記憶も、大量殺戮を犯した記憶もない。
それでも、こんな部屋に幽閉している相手を目の前にしていたら、
首を絞めて殺してしまいたくなる衝動に駆られてもおかしくないだろう。
例え、私を殺すことがそのまま、己を部屋に一生閉じ込める行為だと解かっていたとしても。
「お前に私を殺すほどの度胸があるのか?」
「!」
「ないだろうに。」
夜神月の力強かった眼光が、私の言葉でたちまちに揺らぎ始める。
口の端が自然とつり上がり、夜神月のプライドを逆なでする感触を楽しむ。
憎らしく、可愛らしい反応。可笑しくて堪らない。
「キラのくせに、私ひとり殺せない。」
「僕はっ……!」
キラじゃない?そう否定したいのだろうが、それはできない。
記憶がなくとも、状況がそれを許さないから。
非人道的な空間に幽閉されている自分。
信用して、共にキラ捜査をしていた日本捜査本部の連中からも、キラは夜神月と断言されている。
外界から遮断され、確認する術も得られない。
可哀そうな夜神月。
可愛らしい夜神月。
噛み砕きたくなるほど私が愛しているというのに、なぜ未だにあの男を追いかけ続ける?
私に服従し、あんな負け犬のことなんか忘れてしまえばいいのに。
こんなただの遺物でしかない資料にしがみつき生きているなんて、くだらないだろう?
Lの記憶も、消えてしまえばよかったのに。
本当に死神よりもやっかいな男だ。
(お前を生かしているのは、あの男ではなく私だ。)
夜神月の手を引き寄せ、隣に座らせる。
言葉では反抗的なことを云うが、私のすることに逆らったことは1度もない。
「シャワーを浴びたんですね。いい匂いがします。」
「…………」
肩先ほどに伸びている髪に指を絡ませ撫でる。
そのまま指を首筋の血脈をなぞるように滑らせると、その感触に彼は微かに震えてみせた。
その反応は、異性どころか他者にすら興味を持たない私を興奮させる。
(欲しい……。この男が、夜神月が欲しい。)
私のものにしたいのに、あの男が邪魔をする。
夜神月がLの影を追い求め続ける限り、この奇麗なオモチャは手に入らない。
実に忌々しいことだ。
抵抗しないこの男に、私はキスすらしたことがなかった。
激情に任せて夜神月を抱いたら、案外楽になるのだろうか?
そう思いながらも、行動に起こさないでいる。
私の感情に、感も聡いこの男ならば気付いているだろうに。
だが彼は何も云わず、求めてこない。
だから私も何も云わない、何もしない。
渦巻く感情を持て余し、夜神月を愛でるに留めている。
「Lならこの状況で、貴方にどんなことをするのでしょうか?」
「…さあね。僕は竜崎じゃないから。」
『竜崎』その名前は嫌いだ。
私の知らない名前。私の知らないLの仮の名。
夜神月とLを繋ぐ、合言葉のようなその名前は、私を拒絶するための呪文のようだ。
「でも一緒に過ごしていたのでしょう?――恋人、だった。」
「まさか。友人……でもなかったかもしれない。
一緒にいても、理解できなかったよ。竜崎は不思議な奴だった。」
「Lを愛していた?」
「……覚えていない。」
嘘だ。
キラの記憶を失ったとしても、Lの記憶は消えていない。
Lは常に夜神月を縛り付けて離さない。
「夜神月。お前はキラだ。」
「……しつこいぞ。」
「Lは貴方を愛し、キラに殺された。」
「…………」
「貴方を愛すれば、私のことも殺してくれますか?」
「何だ、それ…?」
未だLに劣る私。誰よりも自覚していることだ。
Lを越え、夜神月に勝てたのは、メロのおかげ。運が良かっただけだ。
私だけではLに追いつけなかった。
今の私は、現Lを名乗りながら、ずっとその背中を追い続ける存在でしかない。
ここにいると、それをまざまざと思い知らされる。
部屋中に溢れるLの残した資料。いみじくも憎らしい、夜神月を未練たらしく生かす動機だ。
(気に入りませんね。死人のくせに、私のオモチャを独り占めして。
実に気に入らない。)
不愉快だ。
だが、顔には出さない。それでは面白くない。
「私は”L”です。」
「さっきから何なんだ?」
Lを越えなければ、夜神月を手に入れることはできない。
だが、相手は死人。
死人に勝つ方法など、あるのだろうか。
「いつか、この部屋は私の事件ファイルで埋め尽くされることになるでしょう。」
Lを続けていれば、いつかその時はくる。
だが、それだけでは足りない。満たされない。
いくら数で追い抜こうと、勝ったとはいえないのだ。
「早く私を殺さないと、
いつか”L”という存在は、”私”に塗りつぶされてしまいますよ?」
「―――…」
夜神月の中のLが、私で上書きされるまで、あの男は笑い続ける。
だがそれを為し得たその時、私の中で渦巻くあの男への尊敬と嫉妬の念は消え、
ようやく夜神月を手にすることができるだろう。
「お前なんか、竜崎の足元にも及ばない。」
「今だけです。」
「僕を抱くこともできないくせに。」
「お望みならば、いつでも抱いて差し上げますよ?」
「誰がっ!」
今のうちに、好きなだけ足掻けばいい。
いつか彼は、あの男を忘れ、私だけを欲するようになる。
そして、私を殺そうとするのだ。
キラであった夜神月もまた、Lの遺物。
夜神月が私を殺そうとしたその時こそ、私がLを超えた瞬間なのだ。
なんで、手出さないんだよ、ニアのあほんだら~!!○(>皿<;O
こんなおいしいシチュエーションなのに、もったいない。
Lをメロと2人で継げって云われた時、冷めてたニアが、
夜神月を手に入れたくて、Lの立場に執着するようになったら面白いなと思って。
ですのを再読したとき、最もたぎったのが、
「私が責任をもってキラを死ぬまで閉じ込めます」
という
プロポーズでした。<違います
L月しか見ていなかったあの時は、「Lに云ってほしかったのに~」と思っていたのに。
時の流れとは恐ろしいものです(笑)
...20160429
×おしまい