支給品
長い監禁が解け、手錠で繋がれるという不便かつ不本意な状況ながら、月はキラ捜査本部に本格的に参画することになった。
ホテルを転々とする非効率な捜査本部は、Lが専用のビルを建設することで改善された。
ホテルのスイートルームに負けない設備、セキュリティも万全、環境に何の文句もない。
食事はケータリングばかりだが、種類は豊富で、味は一流だ。
生活する上で、文句のつけどころはない。

が。
唯一つ、どうしても納得できない、不満なことが月にはあった。

「夜神くん。着替えを用意したので手錠を外します。」
「…………」

着替えるのに、どうしても手錠は邪魔だ。
同じ服を着続けるわけにもいかないので、その時ばかりは竜崎も手錠を外すことをよしとしてくれていた。
着替えはすべて、竜崎が用意した支給品。
月の私物を持ち込むことは許されなかった。
私物を持ち込めないのは、キラとして疑われている以上、納得できる。
実家は家出していることになっているので、足りない荷物を取りに行くわけにもいかない。
無償で用意される衣料品は、大変ありがたいと思っている。
ありがたい、ありがたいが。
納得できないのは、その用意される”着替え”の内容だった。

「……何だ、コレは?」
「お着替えですよ。」

用意されたワイシャツとジャケット、は良い。
普段からシャツ系の私服は着用しているので、文句はない。
だいたい、外出するわけでもなし、オシャレに気を配っても意味はないだろう。
なので、どんなにダサかろうと堅苦しかろうと、構わない。
今回の文句のつけどころは、ボトムスとファッションアイテムにあった。

「何だこの、蝶ネクタイと超ショート丈の短パンは!
「ホットパンツって云うんですよ、若い子は。」
「そんなことどーでもいい!」

流行が解からない父親に娘が返すようなことを云いながら、竜崎は用意したその”着替え”を持ち上げた。

夜神くんの生足が見たくなりまして。今日はこちらを用意させました。」

股下30センチとないショートパンツをいつものように人差し指と親指でつまみあげ、ご機嫌で見せつける。
月が着用した姿を思い浮かべているのか、その顔はとっても楽しそうだ。

「誰が穿くか、そんなもん!」
「では、下着だけですか?そ、それはそれでそそるので全然OKですっ!!
「違ーう!」

どうしてそう、自分の都合好いように話を持っていけるのか。
月はこめかみをピクピクと蠢かせ、必死で怒りからくる頭痛と戦った。

「昨日の”衣装”がことのほかお似合いだったので、今度は生足が見たくなりまして。」
「昨日の……」

思い出したくもない、昨日の着替え。
それはガードル付きの網タイツだった。(ちなみにトップスはVネックセーター)
正直、あり得ないと思ったのだが、別途スラックスを用意されていたので、見えなければいいだろうと妥協した。
見るのは竜崎だけだからと、仕方なく。
それがいけなかったのか?
だが、穿かないとスラックスを渡さないと云われてしまえば、妥協するしかないだろう。
まだ確信はないにしろ、ヨツバの容疑が固まりつつある現在、捜査を放り出すわけにはいかない。
月キラ説が白紙に戻り、すっかりやる気をなくした竜崎を正気付かせ、捜査に進展をもたらす為には……

「本当は、昨日もタイトスカートをご用意したんですが。
 まあ、隠されているからこそ、逆に楽しいってことが解かったのでよかったです。
「何が!?何がよかった?!」
「昨日はミサさんとデートの日でしたからね。
 どうやって皆さんの前でうっかり脱がしてやろうかと頑張ったんですが……
「んなこと頑張らずに、キラ捜査をしろー!」
L:「白い靴下もお忘れなく。」
月:「こんなの、お前が着ればいいだろうが!」
L:「ペアルックがお望みで?」
月:「んなわけあるかー!!」

ご用意した衣装は、某「頭脳は大人、体は子供」の名探偵のものです。
竜崎、声も一緒だったし。
あのちびっこ探偵、ちゃんと竜崎が大好きな白靴下も履いてて、一石二鳥です(何が)。

...20160417
×おしまい