目を凝らして見ようシリーズ(いつの間に?)第2段。
あまり目を凝らし過ぎると、メロニアおバカップルっぷりに中てられますので、ご注意を。
設定だけ、他小話となんとなく続いています。
大丈夫そうかもと心の準備ができましたらば、どうぞ。   

『刑事さんと検視医さん』シリーズ↓(書いた順)
  『赤糸を手繰れば前世の君が付いてきた
  『珈琲と牛乳と醤油とツナ缶』
  『大きく空回り、上を見て葛藤
  『ロンドに合わせて剣を翳して火に焼かれよう
  
珈琲と牛乳と醤油とツナ缶
メロは落ち着かなげに視線を彷徨わせ、小さく咳ばらいをした後、少々の緊張の元、口を開いた。

「腹減ったな。」

持っている雑誌は、手持無沙汰のためにページを繰っていただけのものだ。
暇を持て余している、わけでもない。
職場に行けば、仕事が山ほど待っているだろう。
それでもここに来てしまうのは、一重にこの家の主人を想うが故であった。

「なあ、ニア。何か食うもんはないのか?」
「…………」

返事はない。
振り向けば、ニアはパソコンの画面を真剣な顔――とは云い難い無気力な表情で見つめていた。
こちらの声が届いていないはずもないのに。
完全に無視を決め込んでいる。

「なあ、おい。ニア?」

再度しつこく問いかけると、しぶしぶといった体で溜息を吐きつつ、ニアがようやく視線を上げた。

「…さっきからチョコレートを食べっぱなしでしょう。」

冷たくはないが、やる気のない返事。
だが、ようやく構ってくれたことが嬉しくて、メロは満足げにニタリと笑った。

「飽きたよ。てか、チョコじゃ腹膨れねーし。」
「じゃあ、外に何か買いに行けばいいでしょう?」
「うっし!なら買い物に行こうぜ!」

ニアのその返事を待ってましたとばかりに、メロが勢いよく立ちあがった。
せっかく遊びに来たのに、ニアはパソコンと睨めっこばかりで、メロは腐っていた。
外は文句のつけようのない良い天気。その溜まった欝憤を、外出という形で発散したくて堪らなかったのだ。

「いってらっしゃい。」
「はぁー?!」

だがニアの返事は、そっけないものだった。
再びパソコン画面に視線を戻し、お座成りにひらひらとメロに向かって手を振ってみせる。

「何で?!お前もいい加減疲れただろ?息抜きだと思って、外に行こうぜ?」

是が非でも一緒に買い物に行きたいメロは、パソコン画面とニアの間に身を乗り出して抗議した。
間近に近づいたことで触れた前髪がくすぐったい。
ニアの無気力な表情は変わらなかったが、自分で行動しておきながら近すぎる距離に内心メロは焦っていた。

「あ、えっと…」

言葉も出ないほど一人でどぎまぎしているメロに対し、ニアは冷静に肩に手を当て揉み解す。
少し考えてから、間近にあるメロと視線を合わせ、ニアは云った。

「――パスタが食べたいです。」
「……え?」

始め、ニアが何を云ったのが理解ができなかった。
しばらくしてようやく、言葉の意味を理解し、顔を喜びに輝かせる。

「パスタか!いいな、それ。そういえば最近新しいお店が出来たって、」
「メロが作ってください。」
「マットが云っ、……あー?!」

続いたニアの言葉に、メロは信じられないとばかりに声を上げた。

作るって、何を?パスタをか?
俺が?え、何で?どーしてそうなるんだ?!

メロの頭の中を、たくさんの疑問符がぐるぐると回る。
そんなメロなど全く無視で、ニアがパソコンデスクの引き出しから紙とペンを取り出して、何かを書き始めた。
書き終えた紙をびりっと切り取り、メロに差し出す。

「お願いします。」

ずいっと顔の前に差し出された紙を、反射的に受け取る。
書いてある内容はどうやら、買い物メモのようだ。

「買い物、行ってくださるのでしょう?」

いけしゃあしゃあとのたまうニアに、メロはがっくりと肩を落とし、解かったよと呟いた。
ニアの導き出した結論が、想像できたのだ。

つまり、お腹が空いて暇で外に出たいのならば、自分で買い出しに行ってこい。
パスタをメロが作ってくれるのであれば、その食事にくらい付き合ってやろう。

と、ニアはこう云っているのだ。
一緒に出掛けられず残念に思うも、一緒に食事をしてくれるのは素直に嬉しい。
帰れと云われないことに、メロは喜びを感じていた。

「じゃあ、行ってくる。」
「いってらっしゃい。車に気をつけてくださいね。」
「ガキか、俺は!」

けっと悪態を吐きながらも、ニヤニヤ顔が止まらない。
メロは嬉々として玄関を飛び出していった。

メロが出掛け、静かになった部屋の中。
再びパソコン画面に視線を戻そうとしたニアの視界に、とあるものが見えた。
シルバーチェーンの巻き付いた、牛黒革の長方形のそれは、メロの財布である。

「……メロって、いつもどこか抜けているんですよね。」

やれやれと云いつつ、少し笑う。
メロの憎めない一面である。
彼が周囲から愛されるのも、そんな一面があるからだろう。
乱暴でありながらも、意外と真面目で、優しい気質を持っているのだ。

小さなミスも、笑って許せてしまう。
他人にあまり興味を抱かないニアでさえも、そう思っていた。

「仕方ありませんね。たまには運動するのも、悪くないでしょう。」

そう云いながら、ソファに置いてあったメロの財布を手に、ニアは玄関に向かう。
久々に見た外の景色は、明るい太陽の光に溢れ、思わず目を細める。
まるで誰かさんのように元気な空を眺めつつ、ニアはゆっくりと歩き出した。
メロの行きそうなお店を予想しながら。
一人でいる時間が好きだけど、メロがいる時間も嫌いではないニア。
構ってもらえると嬉しい、ニアバカなメロ。
そんなメロニアが大好きです。

なんとなく、ロング・タイトル30『赤糸を手繰れば前世の君が付いてきた』の続きっぽい感じ。

...20080525
×おしまい

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